疲労骨折の予防と早期発見

予防に続いては、早期発見です。

疲労骨折になる前に早期に診断し,適切な治療期間を定めることが治癒を長引かせないために重要です。

疲労骨折は放っておくと完全骨折に至ります。

また鑑別として難しいのが一度は聞いたことがあると思いますが、シンスプリント(過労性脛骨炎)があります。
その点についても述べたいと思います。

今回は「Sports medicine 158 Feb-Mar,2014 疲労骨折の早期発見」(以下、Sports medicine)を参考にしています。
可能であればぜひ読んでみてください。

これまで述べてきたように、疲労骨折は一度発症してしまうと 1 カ月以上の練習制限が余儀なくされ
るので、まずは発症させないことです。

Sports medicine の中で馬見塚尚孝氏は、
「まず大事なことは、スポーツ現場での二次的予防(早期発見)の雰囲気づくりです」と述べられています。
実際、痛みを我慢している選手がほとんどのようです。

3 つの検査(膝から下のテスト)を挙げられています。
このご時世、簡単に医療機関に受診とはならないので、解剖学的知識が必要となる部分もありますが、疑うためにも知っておいていい知識だと思います。
どれも軽症の段階でわかるテストです。

【1】 圧迫(圧痛)テスト
【2】 hopping test(ホップテスト)
【3】 fulcrum test(フルクラムテスト)

【1】
1 脛骨(すね)の場合 圧迫による痛みをみる方法です。範囲は5cm 未満のことがほとんど。
まれにシンスプリントから移行したと思われるものは 10cm 前後の圧痛範囲を持つものもあります。

2 中足骨(足の甲)の場合 脛骨と同様に圧迫による痛みをみる方法です。
他の方法としてはついては足の甲を押して足首を最大まで写真のように反るようにストレスを加えて
痛みを誘発、立ってアキレス腱を伸ばすようなストレッチをさせても痛みを誘発できます。

【2】 ホップテストは 4 段階で評価します。
片側でジャンプさせ痛みを誘発させる方法です。
この方法は簡単なチェック法として有用です。
痛みが無いのが Grade0
疼痛はあるが10回跳べるのがGrade1
痛くて数回しか跳べないのがGrade2
ほとんど跳べないのが Grade3
となっています。

【3】フルクラムテスト
元々、大腿骨(太ももの骨)後面に腕を敷き膝の部分を上から押さえることによって大腿骨に曲げ応力を与えて痛みを誘発させる方法です。
この方法を応用して、脛骨の場合は写真のように内反方向に曲げ応力を作用させ、腓骨(すねの外側にある細い骨)の場合は外反方向に力を作用させます。

発見後は、かならず、一度は整形外科を受診させてください。
軽症のうちに疲労骨折を見つけることができれば、復帰時期も短縮されると思います。

次に、シンスプリントは、一般的にはありふれたスポーツ障害で軽症との認識がありますが、運動量
の調節が不十分であると慢性化し、強い運動障害となる例もあります。

シンスプリントと思っていたけど、疲労骨折の初期だったということはあり得るようで、両者は全く
別のものと思われていましたが、一連の病態ではないかという報告も出てきています。

Sports medicine の中で万本健生氏は、「断定できないものの、シンスプリントのなかの過労性骨膜
炎と疲労骨折との間には関連性があって、つまり一連の病態で、繰り返される外力が骨膜(骨の表面、
外)からやがて骨髄腔内(骨の中)に広がり、最終的に疲労骨折になる。

いわゆるシンスプリントの中で骨髄内に信号変化(MRI で分かります)が見られた場合には、微細骨折や疲労骨折の前駆病態の可能性に注意が必要ではないかと考えています。」とあります。

痛みは異変のサインです。
耳を傾けてあげてください。

参考・引用文献
1 Sports medicine 158 Feb-Mar,2014 疲労骨折の早期発見
スポーツ現場で有用な下肢過労性スポーツ障害の評価法 馬見塚尚孝
シンスプリントと脛骨疲労骨折の鑑別 万本健生
2 スポーツ傷害(J. sports Injury)Vol. 15:38−40 2010 陸上長距離選手の下肢疲労骨折 田岡病院
整形外科 大西純二