中学・高校の女性中長距離ランナーに多い疲労骨折




疲労骨折とは,ごく小さな外力(特に地面からの衝撃)が骨の同じ部位に繰り返し加わることにより生
じるものです。
時には完全骨折に至ることもあります。

根本は、骨への物理的ストレスによるものです。

“骨の同じ部位に繰り返し”という部分がミソで、競技種目としては同じ動作を繰り返す陸上競技選
手,特に中長距離選手に多くみられます。
いわゆるランニング障害であって,走ることによる overuse(酷使)により生じます。

発症した場合、スポーツ復帰までには長期(2,3 カ月)を要します。

下記のグラフ2は 2018 年の陸上競技連盟が出しているデータです。
(対象 2013 年度 インターハイ全国大会出場 / 2014 年度 全国高校駅伝出場 全選手)

種目別の疲労骨折の割合ですが、短距離と中長距離・混成は 5 人に 1 人に疲労骨折がみられました。
高校駅伝出場選手では 3 人に 1 人と驚くべき数値を示しています。

原因としては、内的要因と外的要因に分けられ、

内的要因は女性(女性アスリート三主徴(エネルギー不足、無月経、骨粗鬆症))、骨密度の減少、筋肉量減少、栄養(貧血、低い BMI)、喫煙、アライメント不良など

外的要因は硬いアスファルト(+傾いた路面)、急速なオーバーワーク(長い走行距離)、古いランニングシューズ(6 カ月以上)などが挙げられます。

部位に関して、下記のグラフ4は田岡病院に来院した過去 14 年間の陸上長距離選手の下肢疲労骨折の
割合です。
脛骨(すね),中足骨(足の甲)で約 7,8 割を占めています。
*疲労骨折は上肢,体幹(肋骨、背骨)にも生じることがあります。

発症年齢に関して、下記のグラフは関東労災スポーツ整形外科の 20 年間のデータです。
(下肢疲労骨折の受診総数は 624 件,男性 350 例,女性 274 例)

15~17 歳にピークがあり高校生を中心に発症が多くなっています。

原因としては、高校に入り急に運動量が増えたことが関係しているものと思われます
(多くは高校受験勉強で運動習慣が極端に減少。私もその 1 人です)


参考・引用
1 日本医事新報社 疲労骨折 櫻庭景植 (順天堂大学大学院スポーツ医学教授)
2 公益財団法人日本陸上競技連盟 陸上競技研究紀要 第 14 巻,220-223,2018
3 Sportsmedicine 158 Feb-Mar,2014 疲労骨折の早期発見
4 スポーツ傷害 Vol. 15:382010 陸上長距離選手の下肢疲労骨折 田岡病院 大西純二
5 臨床スポーツ医学会誌 vol13 suppl.,2005